天職の舞台裏

天職と思って日々仕事をしてますが、その舞台裏で色々考えていること、あるいは水面下でジタバタしてることを書いています。

判例報告レジュメ作成方法の参考書

第4回のタイムリープカフェは、アウトプットについてです。現在、前編が公開されているところ。そういえば、法学部の通信過程でのレポートも最初は驚いた気がします。何を書けば良いの?という感じでしたね。

timeleap-cafe.hatenablog.jp

この中で、「はじめてのゼミレジュメ作成でのとまどい」として、以下のように書かれています。

はじめてゼミでの報告をしようとすると、どのようにレジュメを作ればよいのかがわからない。ゼミで設定された課題から、何を調べればよいのか、どのように調べればよいのかというリサーチに関わる疑問はもちろんのこと、何をどこまでどのような順序で書けば適切な報告になるのかがまったくわからない

そして、「法学部のゼミ形式授業での作法を網羅的にわかりやすくそして具体的に提示した本」として、田髙寛貴・原田昌和・秋山靖浩『リーガル・リサーチ&リポート』(有斐閣、2015年)が紹介されています。

この紹介を読み、リンク先(有斐閣の本書紹介)を見て、本書が2015年02月発行であることを知り、目次を見て大変期待が高まりました。そして、翌日書店で平積みになっているのを手にとって、期待に違わないことを確かめ、即買い求めました。

私の今年のインプットのテーマは「裁判例を読む」であり、過去記事でも判例の読み方、判例研究の方法についての参考文献を当たって苦闘してきたことを纏めています。正直なところ、難しいもの、古いものが多くて、決め手に欠ける印象だったのです。

backstage.senri4000.com

本書では、第2章 法律学習の実践の1が判例研究の手法であり、

まず、(1)で判例や判例学習の意義、判決文の構造などを確認し、(2)(3)でレポート課題の作成とゼミの報告準備の双方の場合に共通する事柄として、判例研究の手順を説明する。さらに(4)では、ゼミで報告や議論をする際に心がけたいことや、レジュメ作成のポイントを示すことにしよう。

とされていて、至れり尽くせりです。

弁理士内での裁判例の研究会でも、報告者を決めて発表し、その後議論をする構造はゼミと変わりません。そのレジュメの作り方については、型があることは共通認識としてあるものの、それをしっかり説明してある参考書の存在は知られていません。正直なところ報告者によって色々なレベルのものが混在しており、判決文の抜き書きがとても多かったりする傾向にもあります。

若手にもどんどん発表をしてもらおう、という話になっても、お手本として適切なものや、テンプレートを提供するのが難しいという悩みがありました。

本書は、レジュメの作成例も付けられています。民法が題材なので、このまま知財の裁判例に使うことはできないとしても、これを土台にテンプレートを作ることはできそうです。記載の留意点も参考になります。スタートの段階で本書を参照できれば、ガイドにそって作成することができますから、ずっと楽に進めることができますし、充実したレジュメを作るために裁判例の読み方も充実させることができそうです。ありがたいばかり。

また、この中の(1)判例とは・判例学習とはの中で、「下級審裁判例を学ぶ意義」という項があり、2つの意義が挙げられています。実務家としては、明らかに意義があるからこそ下級審の裁判例を読んでいるわけですが(最高裁の判例なんて数多くはありませんし)、明快に意義が述べられていて参考になりました。

第1の意義は、事実認定の技法を知るということ。

当事者双方がどのように主張をたたかわせ、そのなかから裁判所がどのようにして事実を確定させ、論点を抽出し、法的判断をしたのか、事実審の判断を検討することからは、紛争解決のあり方やテクニックをよりよく学ぶことができるはずである。

第2の意義は、法適用のあり方を知る、ということ。

判例法というルールを作るのは最高裁の役割かもしれないが、そのルールを実際にどう用いるのか、具体的な事案への適用例を探るうえでも、下級審裁判例の考察は重要となる。多種多様な事案を総合的に考察することを通じて、紛争や判決の傾向等についても、より詳細かつ具体的に把握できるようになるだろう。