天職の舞台裏

天職の舞台裏

天職と思って日々仕事をしてますが、その舞台裏で色々考えていること、あるいは水面下でジタバタしてることを書いています。

経験と記憶

一週間ほどかけて、ダニエル・カーネマン の「ファスト&スロー」上下を読みました。ずっとウィッシュリストに入っていて、少し前のセールで購入し、こんどはKindleの中に眠っていてようやく取り出したものです。

ファスト&スロー (上)

ファスト&スロー (上)

ファスト&スロー (下)

ファスト&スロー (下)

とても示唆に富んでいて、面白く、ぐいぐい読むことができました。色々考えたことはあるのですが、本日は、「第5部 二つの自己」で取り上げられている「経験する自己」と「記憶する自己」について思ったことを。

経験の効用を計測する実験として、大腸内視鏡検査の時に患者が感じる痛みを60秒ごとに評価してもらい、さらに、検査終了後に「検査中に感じた苦痛の総量」を評価してもらうという実験が紹介されています(第35章)。

その結果として、両者はまったく違う結果となり、「ピーク・エンドの法則」と「持続時間の無視」の2つの傾向が見受けられたということでした。記憶に基づく評価は、ピーク時と終了時の苦痛の平均でほとんど決まってしまい、検査がどれだけ持続したかは苦痛の総量評価にほとんど影響しないのだそうです。

検査中の実測は、「経験する自己」であり、終わってから全体の評価を答えるのは「記憶する自己」。刻々と進行する経験は都度記録しておかなければ残らないので、通常、過去に起きたことは「記憶する自己」の視点になる。素晴らしい経験をしていたけれど最後に悪いことが起こると、それまでの経験が変わるわけではないのに、あたかも変わったかのように「ぶちこわしになった」という評価になってしまう。

記憶がなぜこんな傾向を示すかというと、記憶は未来の参照のために保存しておく物語だから。物語とは、重大な出来事や記憶に残る瞬間を紡ぐもので、持続時間は問題にならず、多くの場合エンディングが決定的に重要。

なるほど。記憶は当てにならないから、記録しておくことがとても重要、と思っていたけれど、こうして記憶の性質を説明されると、確かにそれではそうなるよね~、と深く頷いてしまいました。

面白かったのは、経験を継続的に記録する実験方法として、「経験サンプリング法」が紹介されており、これは、携帯電話のプログラムでランダムな時間に呼び出し音が鳴り、今何をしているのか、誰と一緒に居るのか、そのときに抱いている感情の強さを評価してもらう、というもの。

これって、SNSで書き込みするのととても近いな、と思ったことでした。自分で上記のような項目を決めて適当なタイミングでtweetして1日分まとめてEvernoteに入れておけば出来上がり。

そして、佐々木さんが提唱していてTaskChute2やTaskumaに実装されている「瞬時レビュー」であれば、タイミングを計る必要もなく、経験がその都度評価されて記録され、記憶する自己が紡ぐ物語でない、実際の経験により近いものが残っていく。

この本を読んで、ああ、やっぱり記憶じゃなくて記録しよう、と強く思ったのでした。