天職の舞台裏

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天職の舞台裏

天職と思って日々仕事をしてますが、その舞台裏で色々考えていること、あるいは水面下でジタバタしてることを書いています。

私的別姓ばなし その6|子どもたちの姓の選択

子どもへ姓をどう継承するか

結婚した頃は、周りに同様の別姓実践者は通称使用ですらさっぱり見当たらず、ましてや事実婚なんて、という感じだったのですが、時の流れとともに、類は友を呼ぶのか、単にインターネットの発展で出会いやすくなったのか、事実婚の知り合いが増えてきました。事実婚で子どもを持っている人も複数知っています。

夫婦別姓で事実婚の場合、子どもの姓をどうするのかは必ず考えるべき問題になります(通称使用の場合は法律上の姓は定まっていますので自動的に子ども姓はそれに統一されます)。選択的夫婦別姓が検討される場合にも、大きな議論になるのは子どもの姓だと思います。前回のエントリに少し書きましたが、日本名では姓を結合するとか、ミドルネームをつけるといったことが難しいため、両親どちらかの姓を選択する必要があります。その場合に、どちらの姓を取るのか、そして、子どもが複数居る場合に統一する方がいいのか、どちらでもいいのか、という観点があります。

子どもの姓は統一したい?

我が家には息子が2人いますが、兄弟の姓は統一しておらず、息子1号は私の姓、息子2号は夫の姓としています。兄弟別姓ですね。息子1号が1996年、2号が2000年、どちらもカナダで生まれています。

事実婚+子持ちの知り合いの中で、我が家と同様に複数の子どもたちの姓を夫婦それぞれの姓に分けている(兄弟別姓にしている)方は1組しか知りません。他の方々はすべてどちらかの姓に統一されており、そして父親の姓に統一しているケースが多いようです。

統一している理由としては、「兄弟で違う姓にはしたくない」と言われる方が多く、さらに、それを父方姓にしている理由としては、父方の両親の要望であったりするようです。中に、「子どもの姓を統一すると、そうでない方の親が家族で一人だけ違う姓になる、それを相手に強いるのは気が進まない、自分が我慢する方が耐えやすい」と言われていた方があり、不思議な感じがしたのを覚えています。

ペーパー再婚か認知か

さて、カナダに転居したときは、息子1号を妊娠中でした。事実婚状態にありましたので、出産に際していくつか考えるべきことがありました。法律婚でないまま出産すると、父親との親子関係は認知によって確定させることができますが、子の身分は非嫡出となります。それを気にするのかどうか。他に嫡出子がいるわけではないので、非嫡出であることの実体的な不利益があるわけではありませんから、どちらかというと、父親との親子関係を明らかにする方法として、認知届を出すか、婚姻届を出すか、という2つの方法があると考えた方がよさそうでした。

婚姻届を出すとすると、その後法律婚のままで通称使用に移行するのか、再びペーパー離婚して事実婚に戻すのかについても考える必要があります。海外転居が決まっているということで、日本と比べ、パスポートが身分証としての役割が大きくなります。戸籍姓を変えてしまうと現地で通称使用をしようと思っても上手くいかないリスクがありそうに思いました。一方、再びペーパー離婚しようと思うと、出産後になりますから、帯同家族の身分でカナダにいるにもかかわらず、現地で離婚届を出すというのもあまりよろしくなさそうな気がしました。

前回のエントリに書いたように、事実婚のままビザが下りる目がありそうでしたので、ここで法律婚にしてしまうのはもったいない気もします。

ということで、事実婚のまま出産し、父親が認知するという方法を取ることにしました。

認知のタイミング

ところで、出生届は出産から14日以内に窓口に出しに行く必要があり、出産直後のその時期に母親が動けるとは限らないので、父親が出すケースが多いようです。例の参考書籍には、事実婚で出産する場合には、出生届を父親が出しに行くと窓口で受理してもらえなかったりするので、出生前に胎児認知をしておくとスムーズと書かれていました。なるほど、と思って、渡航前に、地元の役所に出かけて胎児認知の手続をしました。あまりケースとして多くないらしく、窓口で時間がかかりましたが、なんとか受理してもらい、これで安心して出産を迎えられる、と思ったものです。

実際には、海外での出産の場合には、14日以内ではなく3ヶ月以内の届出となるため、私自身も外出に問題ない時期になっており、息子1号本人も連れて出産の約2ヶ月後に日本領事館に届出に出向きました。おまけに、胎児認知のコピーを持って、父として夫を届出者にした出生届を出そうとしたところ、領事館ではねられて私を届出者として訂正することになったのでした。戸籍法の規定により、非嫡出の場合は届出資格者は母のみなのです。認知していても父親は届出ることができないという建付けなんですね。

第52条 (届出義務者・資格者)

嫡出子出生の届出は、父又は母がこれをし、子の出生前に父母が離婚をした場合には、母がこれをしなければならない。

2 嫡出でない子の出生の届出は、母がこれをしなければならない。

3 前2項の規定によつて届出をすべき者が届出をすることができない場合には、左の者は、その順序に従つて、届出をしなければならない。

   第1同居者

   第2出産に立ち会つた医師、助産師又はその他の者

4 第1項又は第2項の規定によつて届出をすべき者が届出をすることができない場合には、その者以外の法定代理人も、届出をすることができる。

ということで、特に胎児認知は不要、という結論になり、息子2号の時には出生後にゆっくり認知届を出しました。

カナダでの出生届と日本への出生届

出産後、国に子の出生の届出をすること、その際には出産を取り扱った医師や助産師による証明が必要になるのは国によらず共通のようです。

ケベックでの届出

カナダ(ケベック州)で出産した場合、出生届(Declaration of Birth)を州に提出することになります。フォームは病院に用意されていて、病院側の必要事項は記入してくれます。親の側が記入するのは、生まれた子の名前、両親の氏名と署名だけでした。

そして、ケベックの場合、この届の提出は、入院中に記入を完了して預ければ、産院で当局に提出してくれます。その方が簡便なのでそのようにするのが通常のようでした。退院してから自分で提出することもできるのですが、手慣れた産院の事務方にお任せした方が安心です。

問題は、産後の入院期間が通常分娩だと2日間と短いことで、その間に名前を決定して記入を完了して提出しなくてはなりません。私は息子1号の出産時は「初産だから大変だったよね、もう1日余分に滞在してもいいよ」と言われて3日おりましたし、息子2号の時も結局「自然分娩だと大変だったでしょう。もう1日ゆっくりしたら?」とか言われて(彼の地では無痛分娩が普通で、私はギリギリまでトライしてみようと自然分娩を選択したところ、えらく周囲に感動されました・・)3日滞在しましたが、それにしても短いです。

息子1号の時は性別がはっきりしていたこともあり、事前に名前を決めていたのですが、息子2号の時は性別が最後まで不明なところがあり、なかなか名前が決まらなくて出産を迎えてしまい、かなり焦りました。手続もよく分からないのにこのまま決めかねて病院にいる間に出せなくなったらどうしよう、と悩みましたが、なんとか決断して滑り込みで提出。

出産時に配布される冊子の中に、子どもの姓の決め方が詳細に書いてあって「へぇ~へぇ~へぇ~」と思ったのが前回のエントリの元です。今検索すると、同様のことが説明してあるサイトがありましたのでリンクしておきます。

www.educaloi.qc.ca

現地の届出姓と日本の戸籍姓の一致は要求されない

息子1号の出生の時には、ケベックで届け出る氏名と日本の出生届での氏名が一致している必要があるだろうと思い込んでいて、上記のような姓の決め方ができると書かれているのを羨ましく思いつつ、日本の出生届に合わせた形でDeclaration of Birthに氏名を記載しました。日本の戸籍法上、非嫡出子は母の姓になりますので、私の姓で届出をしたのです。

その後、実際に出生届を出してみて以降に分かったのは、特にそこの氏名の一致が必要なわけではないということでした。ということで、息子2号のときは、結合姓にこそしませんでしたが、ミドルネームに私の姓を入れ、夫の姓にして届を出しています。一方、日本では、嫡出でないため一旦私の戸籍に入りますから、私の姓で出生届を出しました。息子1号にも同様にミドルネームをあげたかった~、と後から思いましたがどうしようもありません。

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上述したように、海外で出産した場合、出生届は、出生から3ヶ月以内に、在外公館(大使館や領事館)に提出するか、本籍地の役所に郵送で提出することになります。これには、出生証明書を添付する必要があります。出生証明書は、ケベック側の出生届の登録完了をみはからって申請し、発行してもらいました。出生証明書の原本と訳文を出生届に添付して提出。こうした書類の準備が必要なため、海外では出生届の提出に国内よりもかなり猶予があるのだと思われます。

上に書いたように、息子2号のケベックでの登録氏名は当初から父方姓になっています。その出生証明書を付けて、私の姓で出生届を出しているわけですが、まったく問題になりませんでした。父母と出産の事実が証明できればよいようです。

それぞれの姓を子どもたちに伝える

息子1号が生まれたとき

さて、非嫡出子の場合、子は母の戸籍に入り、母の姓となります。息子1号の出産のときは息子の姓についてそこまで真剣に検討したわけではなく、どちらかといえば、なにも積極的にアクションしなかったたため、姓はそのまま母の姓=私の姓となりました。この時点では、複数人子どもを持つかどうかもわかりませんでしたし、次は父の姓にしよう、と決めていたわけでもありません。

息子2号が生まれるとき

息子2号の妊娠時には、これらの出産を巡るアレコレは既に経験済みですから、経験を踏まえて準備検討しました。姓については、息子1号が私の姓になっていますので、次子は夫の姓にしたいと思いました。ここについては、夫婦で意見が分かれることはなく、夫婦それぞれの姓が有るのだから、一人ずつ互いの姓を子どもに伝えるのが自然で公平だろうと合意しました。夫としては、さらにどちらの姓も自分の姓だと子どもたちに思って欲しい、という思いがあったようでした(その趣旨の発言はその後息子たちが長じてから何度も聞いています)。

このときも、それ以降も、子どもたちの姓を統一しようという考えは浮かびませんでした。子どもが3人になっていたらどうしただろう?と思うことはありますが、実現しなかったので、いい具合?にそのままです。

(またまた)ペーパー再婚か認知か

息子2号の姓を夫の方にするにあたって、手段としては、1) 出産前に、夫の姓を選択して婚姻届を出す(この場合、準正となるので息子1号も嫡出となりますが、特に手続しなければ息子1号の姓は母の旧姓のままとどまります)、2) 認知の後、「子の氏の変更許可申立」を行って、裁判所の許可を得る、という2つがあります。手間としては1)の方が簡便だと思いますし、そのような方法を取っている方の例も参考書籍には載っていました。ただ、この「ペーパー再婚」方式は、息子1号のときの考慮要素と同じリスクがありますし(上述)、なにより便宜的に婚姻届を利用するというのがあまりすっきりしませんでしたので、正面から2)の方法を採ることにしました。

子の氏の変更許可

子の氏の変更許可の申立先は、住所地を管轄する家庭裁判所です。上にリンクした裁判所のページには記載がありませんが、同種の「氏の変更の許可」のページには、以下のように書かれています。

海外に住居所がある日本国籍の方が氏の変更の許可を求める場合には,日本における最後の住所地の家庭裁判所に申し立てていただくことになります(もし,日本に一度も居住したことがないなど,日本における最後の住所地がない場合やその住所が不明である場合には,東京家庭裁判所に申し立てていただくことになります。)

子の氏の変更許可の申立人は、子本人で、法定代理人が子を代理して手続をします。息子2号はカナダで生まれているため、「日本に一度も居住したことがない」ケースなのかしら?と思いますが、いずれにしても、参考書籍の関連箇所には海外からこの許可を申し立てる場合には、東京家庭裁判所が管轄すると書かれていたため、特に疑問を持つこともなく東京家庭裁判所あてに申立を行いました。

郵送で申立書を送ったのですが、そもそも様式の取り寄せはどうしたのだろうとか、まったく覚えていません(苦笑)。息子2号の出産後の2000年当時は、既にADSLでインターネット接続をしており、それなりに検索ができた(Googleが登場していた)ので、ダウンロードでできたのかもしれませんが、さっぱりです。

現在、裁判所の申立書の案内ページには、以下のような記載があります。

実際に申立てを受けた家庭裁判所では,判断するためにさらに書面で照会したり,直接事情をおたずねする場合があります。裁判所からの照会や呼出しには必ず応じるようにしてください。

当時、申立後に、東京家庭裁判所からは照会状が郵送されてきました。要約すると、

氏の変更によって親権者が移動するわけではない(母親のまま)ので、形式的に、親権者から非親権者への氏の変更にあたる。離婚などでこうしたケースはあとから揉めることが多く、手続き的に難しい面がある。

あなたのケースは夫婦別姓のために事実婚でともに生活しているとのことなので、こうした心配はないと思うが、念のため、同居して生活している状況を、上申書という形で書面にして出して欲しい。証明ではないので、概ね同居されていることがわかればよい。

そして、息子2号くんが父の姓を名乗ることに異存がないことを父が書き、最後に両者の署名をして欲しい。

ということでした。手元にこの照会状のみが残っているので、そんなことがあったのだ、と分かるのですが、確認するまですっかり忘れていました。この照会状を受けて、上申書を書いて送ったのだと思います(ぜんぜん覚えていませんが、昔のデータをサルベージするとひょっとすると出てくるのかもしれません。)。

パスポートも父方姓で

そして無事に許可が下り、入籍届も出した、のだと思います(ここも全く記憶がありません)。記録も残っていないので確認のしようがありませんが、戸籍事務は領事館で取り扱っていましたから、そちらに提出して本籍地に送られたのでしょう。いずれにしても、出生届から約1年後には、夫の戸籍に移動し、日本の法律上も息子2号は夫の姓となりました。1歳直後に日本のパスポートを取得しており、そちらも夫の姓となっています。