天職の舞台裏

天職と思って日々仕事をしてますが、その舞台裏で色々考えていること、あるいは水面下でジタバタしてることを書いています。

アーキテクトの仕事方面

賞与のシーズンです。

従業員の賞与は6月と12月の年2回ですが、役員(執行役員も取締役も)の方は夏のみ。昨年度の実績の評価に基づいた業績連動報酬という位置付けです。当社は任意の報酬委員会が設置されており、執行役員以上の報酬(賞与もRSも含む)については、総額原資から個人別の金額まで原案を諮問して審議の上同意してもらったものを確定金額にしています。

これまで、社長と1on1の賞与開示面談はあったものの、あまり明確にフィードバックがなく、面談内容も金額と一言コメント、この機会に言っておきたいことを話すといったふわっとしたものでした。

が、今後もう少しシステマティックにしていこうという意向らしく、面談に先立って以下の点を対話できるよう準備するようにメールが出されました(執行役員向け)。

1) 先期業績に対する自己評価(自分の貢献度に対する定量的/定性的)

2) 事前質問

①あなたには余人に代え難い要素(認知・非認知スキル等)がありますが、自分でそれは何だと認識していますか?

②あなたには修正可能か分からない重要な課題がありますが、自分でそれは何だと認識していますか?

③あなたの人生プランを話せる範囲で共有してください。

私は執行役員ではないせいか、このメール自体はもらっていない(出しますよという裏側のチャットを見ていた)のですが、賞与開示面談は設定されています。対話が同様に進むのかどうか不明ですが、この機会に考えておくのは悪くないだろうと思いました。

そしてまた、こういうお題に対しては、自分で唸って考えるより、AIと対話して仕上げて行った方が色々な観点を引き出してもらえて豊かになることが経験済みです。以前、Geminiとの対話から「アーキテクト」という性質を浮き彫りにしてもらいましたが、似た構図です。

backstage.senri4000.com

ただし、私のAI利用は、仕事上は会社で(部門で)契約しているChatGPT(チャッピー)です。仕事上のキャッチボールはずっとチャッピー相手にやっているので、Geminiに聞くよりチャッピーの方が適しているでしょう。ということで、対話してみました。この記事は、その対話の記録であり、自己理解が対話の中で書き換わっていく経過そのものが興味深い体験になったので、書いておこうというものです。

初日の対話の流れ

上記の質問を、そのままチャッピーにぶつけました。ただし、私の職掌上、先期業績への直接的な貢献を問うても難しいので、丸めて。

これまでの会話から分かる、私の会社に対する貢献を表すとどのようになりますか?また、以下の質問がなされた場合、どのような観点から答えるのがよいでしょうか。

1) あなたには余人に代え難い要素(認知/非認知スキル等)がありますが、自分でそれは何だと認識していますか?

2) あなたには修正可能かわからない重要な課題がありますが、自分でそれは何だと認識していますか?

最初のターンでは、「これまでの会話から把握できる範囲では、あなたの会社への貢献は単なる「法務担当役員」や「コンプライアンス責任者」という職務範囲を超えているように見えます。」とした上で、綺麗にまとめて回答が返ってきました。

貢献は「企業グループ全体の持続的成長を支えるガバナンス基盤の設計者」、余人に代えがたい要素は「複雑な問題を構造化し、ガバナンスやコンプライアンスの観点から経営判断につなげる能力」、課題は「スピードより確実性を優先してしまう傾向」または「不確実性に慎重になり過ぎる」。

課題はどこにあるのか?

ん?その課題って、法務コンプラ系の人の一般的なものを引っ張ってきているだけだよね?最初の返と矛盾してるじゃん?と思い、これまで自分が遅いと思ったことはないよ?仕事のペースで仕事をするモットーでずっとやってきたし、と返したところ、すかさず回答を書き替えてくる(笑)。

そこは少し見方を変えた方がよいかもしれません。実は私は先ほど『スピードより確実性を優先する傾向』という仮説を出しましたが、ここまで話してきた内容を踏まえると、あなたにはあまり当てはまらない気がしてきています。むしろ逆かもしれません。あなたは『遅い』のではなく、『構造が見えれば速い』。

そして代替仮説を3つ提示:①「構造が見えない人が見えにくい」、②「論点発見に興味があり、運用維持に飽きやすい」、③「自分の価値を過小評価しやすい」。

飽きっぽい自覚はあります(このブログにも前のブログにも3年で飽きる系の話はよく書いている)ので、②の仮説に乗ってみました。「新しい仕事の論点を見つけてシステムを構築するのが一番楽しくて好き」だから、運用が軌道に乗ると人に任せて次に行きたくなる。そしてそこから敷衍して、「仕組みを作る、仕組みによって動かす方に興味があり、極論すると人にはあまり関心がありません。人材の育成より仕組みの構築の方が効くだろうとつい思ってしまう」との自己認識を提示しました。

チャッピーはこれに対しては慎重で、「あなたは『人が嫌い』なのではない。『個人の特性に依存する解決策が好きではない』のだと思います。これは人間への無関心というより、再現性への強い志向です」と。「再現性への強い志向」には納得感があり、10年続けている株主総会の運営の話をしました。

ずっとブログにも書いてきていますが、法務部門の(ほぼ)全員が担当者として回せるようになっている必要があると考えて、2年ごとに担当者をローテーションして全員に経験させてきています。経験者と一緒にやるのが絶対楽なんですが、それでは組織の品質が標準化されないので、きつい〜こいつむかない〜などと内心ぶーたれつつ、我慢してローテーションを優先させてきましたよ。そして、そのターンが一通り終わったので、一番向いてそうな担当者をアサインして最強のシステムで回すフェーズに入っている今年だということ(これは部門ミッションが変わって株式事務と有報が乗っかったので、最強布陣で臨まないと厳しそうだ、という事情もありますが)。

すると、チャッピーはさらに仮説を書き替えてきて、

あなたの課題は、『人への関心が低い』ではなく、『人を個人として見るより、組織能力の構成要素として見がち』なのかもしれません。本当に人に関心がない人は、「一番優秀な担当者に10年間やらせる」を選ぶ。あなたのやったことは、人材育成を目的にした施策というより、「組織能力の構築」を目的にした施策です。

おっしゃる通りですねそりゃ。向いてる人はこの人とこの人だよ!って一緒に数ヶ月を走り抜けていれば分かります。前年の担当と比べることだって頻繁ですし、そもそもアサインの段階で、その担当者の認知スキルの傾向は見えているわけですから、不安にもなりつつ、「いややってみたら案外向いていることがわかるかもしれないし」と自分を宥めて使ってきているわけですよ(あんまりそういう嬉しいサプライズはなかったけど!!)

ここで(夜も更けたので)一旦対話は終了しました。特に人に対する自分の見方が表面的だったな、ということが会話を通じて明らかになって面白かった。最後に質問への回答を改めて整理してもらったところ、以下のようになりました。この時点では、ふむふむと思ったし、これを手元メモとして持っておけばいいかな、程度に考えていました。

  • 貢献:属人化した業務や組織課題を構造化し、再現可能な組織能力へ転換することで、会社の持続的成長を支える基盤を作ってきました

  • 余人に代えがたい要素:「未知で複雑な問題であっても本質的な論点を抽出し、経営が意思決定できる構造に整理する能力です

  • 重要な課題:仕組みを設計し組織能力を高めることに強い関心を持っています。一方で、仕組みが定着する過程での人の感情や動機づけ、また完成した仕組みを長期にわたり進化させ続けることについては、意識的に向き合い続ける必要があると考えています

しかし、対話を終了してから、気づいたことがいくつかあって、それが翌日(本日土曜日!)の続編につながって行きました。

対話と対話の間(幕間)

上記の中には書いていませんが、対話の中で、チャッピーが「会社があなたに期待していたのは『組織アーキテクト』ではなかったかと思います」と言ってきて、内心「おおここでも『アーキテクト』だよ〜」と思いましたよ。こりゃ冒頭引用した4月の記事と接続するしかないでしょう。

また、仕事のスピードの話を対話でやっていて、実際自分の仕事は遅くないという自己認識があるのだけど、そういえば規程の見直しにものすごい時間がかかっていて、何度も社長にどやされているんですよね(最近注目度が下がって何も言われてないけど、そろそろ完成させないと流石にまずいと思う。現場からもまだですかと言われまくっている)。「間に合わない〜」という記事も書いていたりします。

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この系統は確かに時間がかかるんだよね、これはまた違う観点があるのでは、と思いつつ就寝。そして翌日の日記フローの中で、TCC2のコメントに上記のやり取りが出てきているため、Claude Codeと話をして、ブログ記事のテーマとするなら対話を再開してもう一段深掘りした方が良さそう、という結論になり、休日に会社PCを開いて再開したですよ(会社契約なんで、外に持ち出すのは認証の関係で難しい)。

2日目の対話

再開はこんなメッセージから。

一晩経って、仕事のスピードと組織と人の関係について思ったことがあります。私は昨日、自分の仕事は遅くない、と言いましたが、昨年から取り組んでいる、職務権限規程とその別表の見直しにかなり時間がかかっています。着手してから1年半くらい経っていますがまだ改定版をリリースできていない。全社の役職員すべてに影響するだけに、絵に描いた餅になるような改定をしても仕方がないので全社の組織変更があってからその運用が落ち着くまで見守っていたのと、あまり暫定的に流さずにしっかり変更組織・体制に合ったものにしたかったのとで、詳しい人を複数人巻き込んで作成し、修正し、これで行けそうかも?まで来ると(そういう人は皆忙しいので)暫く停滞してしまい、の繰り返しであと1割くらいのところにようやく来ていますが本当に完成するのか?という状況になっています。

これによって、昨日の結論を再度書き直してきたチャッピー。「あなたの課題はスピードではなく、『システムとして成立する確信が持てるまで発車しにくい』こと」「構造が見えても運用が見えないと進めない人」「評価基準が『正しい制度か』ではなく『使われる制度か』だから」。そして「これは欠点というより、品質志向のコストですね。」という。

また、この流れで、昨日までの「人への関心」の整理にも修正が。「あなたは『人そのもの』にはあまり関心がない。しかし『人が作り出す組織行動』には非常に強い関心がある」「個人ではなく集団行動に興味がある。これは組織設計者としては非常に自然です」。

なるほどね。個人の育成や成長プランには正直関心が低いので、ずっと自分は人に関心がない、と思ってきたのだけど、確かに、組織の構成要素としての人、その人たちの動きとしての組織行動には関心がありますよ。だって仕組みを動かすのは人であることは間違いないので、動かす人に合わせた設計をしなかったら1ミリも動かないのは当然だもの。(あ、そういえばそこにAIが入り始めてる昨今はそれはそれで面白いけど話としては脇だな)

トップにどやされる話

会社が合併して古い規程のまま読み替えてなんとか運用している状態を1年2か月継続していて大変申し訳ないんだけど、まだ対応が完成していないのよ~という感じなんですよね。仕事が速い自負はあるけど、速くできることばかりではないです。まだかとトップにどやされることもよくあります。

意思決定の運用をどんどん変えて先に行ってしまうのが社長で、それを再現可能にシステムに落とそうとしているのに「まだか」と言われる構図ですね。よくあります。何度か回って落ち着いてこないとこれが定常運航(特殊ではないやり方)だと言えないので、様子を見たいんですよね。

一方で、社長だってギリギリまで考えたいと粘ることも多くて、私は「この決定はギリギリいつまで後ろに倒せますか」と何度聞かれたことか。役員候補の決定だったり、総会の議案だったり、法定期限があるものにはその前に実務期限があるものが多いので、確認が入る(確認してくれるだけマシだと思おう。。)。そして、そのギリギリを攻めようとする(笑)。よい意思決定をしたいという思いは理解できるので、実務方を走り回らせないギリギリを考える癖がついてしまった。

チャッピーには、「社長は前で走り、あなたが後ろで舗装する。その距離感が、お二人の仕事の本質なのかもしれません」と言われる。綺麗にまとめてきたな笑。

職務権限規程は、いままで暗黙知で回してきたことを言語化していざとなったらのよりどころにできるものに全面改定していて、いったん本文は完成しています(このためにAIも法務のベテラン担当者も使い倒した)。そして、その規程本文を前提に、個別の事項についてどのような権限を誰が持つのか、これまで現場に任せて増えるだけ増えてきた別表を整理して汎用的なものにしたい、今度こそ、と思って(これまで不満が強かったんで)やってきました。

たぶんこれで完成ではないけど、一定のところまでは行けると思うし、その後の改定ももう少し楽になると思っています。その陰で、昨年4月から導入した執行役員制度に基づいて毎月行っている執行役員会を統制する規程が未制定。。。合併前の事業会社の取締役会相当で回しているけど少し意味が違うんだけどな、と思いつつ、これも運用が安定していないのでドラフトだけざっと作って寝かせてあります。職務権限が落ち着いたらこれと関係会社管理規程をやっつけないといけない現状。これもチャッピーに共有しています。ちゃんとやろうとすると重たいんだよこいつら。。。

この辺りで固めて前に進みませんか、と各方面から言われつつ、ある程度安定して運用ができる確信が持てないとGOサインが出せないんですよね。はい。今期中には全部改定はしたい、したいと思ってますよ、本気で(先期中には無理だとは早々に諦めたけどな)。

着地

ともあれ、対話を重ねたことで(6万字越えになった。チャッピーの癖として、改行多用されるので(何度嫌だと言っても改めてくれず、すぐ元に戻る。いうこと聞かないんだよ怒)、見辛いったら)、自己認識もどんどん書き換わる経験ができました。非常に刺激的で面白かった。

「遅い」の変遷

対話の入口では「スピードより確実性を優先する傾向」と言われ、それに「遅い感覚を持ったことがない」と反論して撤回させたけど、そういえば遅いものもあるよな、と翌日の対話で職務権限規程の改定に時間がかかっている話を持ち出したら「システムとして成立する確信が持てるまで発車しにくい」と整理し直されました。

つまり自分は単純に「速い」のでも「遅い」のでもなく、「設計フェーズは速いが、運用される確信が持てるまで発車しない」というのが今の整理。これをチャッピーは「品質志向のコスト」と呼んでいて、それは確かにそうだと思っています。

「人への関心」の変遷

初日の対話の中で2回書き換わり、翌日の対話でさらに一段書き換わって、計3段階を経ました。上にも書いたけど、「人にはあまり関心がない」 と申告したら、「人が嫌いなのではなく、再現性への強い志向」 → 「個人として見るより組織能力の構成要素として見がち」 → 「人そのものには関心がない。しかし人が作り出す組織行動には強い関心がある」。

「人への関心が相対的に弱い」という表現は、自己評価としては正確ではなかったと思います。正確には、関心の向き先が違っていた、ということかな。仕組みを構成しているのは人ですからね。そこを見ていないわけでは決してない、ということかと。

表裏一体

組織行動が機能するまで見届ける品質志向だから時間がかかることがある。──「遅い/遅くない」と「人への関心」は、別々の話ではなく、ひとつの性質の表と裏だった。

人生プランについて

質問の最後の人生プランについては、別途。考えては見たんだけど、ちょっとまだ浅くて、チャッピーには、「特に組織再編でやったことについてケースブックを作った方がいい」とか言われてます。