天職の舞台裏

天職の舞台裏

天職と思って日々仕事をしてますが、その舞台裏で色々考えていること、あるいは水面下でジタバタしてることを書いています。

私的別姓ばなし その3|通称使用の時代

家族手当というもの

今は企業の福利厚生はかなり整理されてしまっていますが、その昔、給与が生活給の性格が強かった時代には、基本給の他にいくつもの手当がありました。その一つが家族手当で、結婚したり、子どもが生まれたりするとお祝金だけでなく、月々数万円が手当という形で上乗せされたのです。

結婚による配偶者手当は、元々の趣旨としては、扶養者が増えるからその分を補填しようだったのではと思いますが、当時の夫の勤務先では特に配偶者の有職・無職の区別はなく、結婚したら会社に手当を申請することができました。但し、その証明として、「配偶者」の記載のある住民票の写し(記載事項証明)を要求されており、当然ながらそれは法律婚がなされていることが前提となっていました。

夫としては、結婚自体が事実関係であり、法律婚かどうかで手当の支給を差別するのはおかしいと主張したようですが、人事の回答としては、それを否定する訳ではないが、どこかで線を引かなくてはならず、線を引くところとして、妥当性が高く不正が起きにくい住民票を採用しているのだということでした。それはその通りで、納得できるところがあります。

主義か実利か?

事実婚で手当が貰えないとなると、選択肢としては、事実婚を貫いて手当は諦めるか、婚姻届を出して手当は貰い、通称使用に移行するか、という二択になります。前回引用した参考書籍にも、法律婚が家族手当の支給基準になっているために、事実婚を諦めて通称使用を選択する夫婦が多いということが書かれていました。

そして、私たちとしても、事実婚でこのまま行きたいのは山々だったのですが、なにしろ若くて貧乏だったので、届を出すだけで上乗せされる月々○万円を捨てることはできませんでした。一応通称使用で両親と合意したという手前もありましたので、ここは譲って婚姻届を出すことにしました。今回このエントリを書くにあたって戸籍抄本を確認したところ、届の提出日は結婚式から約1ヶ月経過していました。

なお、届を出すにしてもどちらの姓にするかという選択はありましたが、両親との合意事項をわざわざ破るとさらに事態をややこしくしそうだったので、ここは大人しく?夫の姓で行くことにしました。

通称使用のコツ

参考書籍には、職場だけでなく私生活でも通称使用を継続するためのコツが満載で、大変参考になりました。基本は、『今の制度は法律婚が改姓を強制しているために便宜的に改姓しているだけで、自分としては決して戸籍名が本名だと認めている訳ではない。自分の姓は結婚前と変わっていない』というスタンスを貫くこと、でした。

婚姻届を出すと、自分の姓の拠り所が戸籍上なくなります。このため、かなり上記のスタンスを強く持っていないとどんどん戸籍姓に侵食されてしまい、混乱が生じることも増えてきます。このため、時間の経過とともに、私生活では改姓前の姓を使うことを諦めて戸籍姓にすることになる例が多いということも書かれていました。

上記の『自分の姓は結婚前と変わっていない』スタンスの具体的な実行としては、自ら氏名変更届の類を出さない、自分で戸籍姓を名乗らない、ということです。銀行の口座は継続して使えば特に証明が必要な訳ではありません。免許証もそのまま継続して使えます。

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最も手強いのはパスポートですが、これは更新可能なら届を出す前に更新しておくのが吉。旧姓併記は当時も認められてはいましたが、研究者などで相当実績を証明しないと難しそうでした。ただ、パスポートは国内で日常生活を送る分には登場する局面は稀なので、身分証明書として旧姓記載をキープすべきは免許証です。住所変更は、更新を待たずに警察署に行って裏に記載してもらいます。新しい銀行口座やクレジットカードが必要なら、婚姻届を出す前に、自分の姓で申し込みしておきます。

最後に会社です。会社にも、 氏名変更届があります。結婚式から新婚旅行にかけて、結婚を理由として特別休暇の申請はしましたが、その後最後まで氏名変更届は出しませんでした。会社には、戸籍名で税務関係の処理が発生していたと思いますが、特に指摘された覚えはありません。幸か不幸か当時夫と私は同じ会社に勤めており、その辺の事情は人事に筒抜けだったと言うことも影響しているのかもしれませんが、ヤブヘビになるのは避けたかったので追及したこともなく、そのままで通しました。

通称使用の日常生活

ということで、婚姻届を出しはしましたが、日常的には特に変更なく、夫の姓を使うこともなく、過ごしていました。

勤務先会社が夫と同じだったため、共通の知り合いが多く、また、当時は旧姓使用が制度的に用意されていなかったため、私が結婚後も改姓しようとしないのを見て、会議中に夫の姓で呼びかけられたりということもありました。

現在は、当時と比べると旧姓使用を認めている会社も大幅に増えており、別姓です、と言ってもあまり疑問に思われなくなりました。当時はまだ珍しく、「どうして?」と言われることも多く、参考書籍を読んでなし崩しに戸籍姓になっていくことに対して警戒感が強かったこともあり、また、なによりまだ若かったことで、肩に力が入りまくっていたと思います。

どうして別姓なのかについては、素朴な気持ちが核になっているので、論理的にうまく説明して納得してもらうということが難しく、力説してみても通じないことが多くて空回りしている感もありました。会議中に夫の姓で呼ばれたときには涙が出てきて参りました。

こうしたいくつかの波風はあったものの、大きな影響はなく、この先特に支障がなければこのまま通称使用で過ごしていったと思います。しかし、婚姻届から1年強経過後、どうしても戸籍名が必要になることが発生し、自分の名前として戸籍名を使うかどうかを検討しましたが、やはり妥協はしたくないという気持ちが強く、ペーパー離婚に踏みきることになりました。