天職の舞台裏

天職と思って日々仕事をしてますが、その舞台裏で色々考えていること、あるいは水面下でジタバタしてることを書いています。

言語化の得意・不得意

とあるセミナーを受けており、お題は、その方の経験談で、大切にしてきたこと、うまくいったこと、課題とその対応などでした。

素晴らしい経歴の方だと思う一方、お話があまり一般化されておらず、自分に引き付けて考える際にどうしたらよいのか分かりにくくも感じました。一方で、その方の話を主催者の方で整理して提示してくださり、それによって「ああそういうことね」とよくわかる面がありました。講演の後の質問でもその傾向が顕著で、うまく整理されずに回答が回答になっていないように聞こえたところを横からきれいにまとめていただけて!!となったものでした。

おそらく実際の現場では、個別の対応をそれまでの蓄積による経験の足し算・掛け算で非常にうまくなされているのだと思いますし(経歴からそれが推察される感じでした)、それをよく知っている主催者の方がはたからうまくまとめてもらうという形になってちょうどいい塩梅になっていたのだろうと思います。

とはいえ、セミナー講師をされるという観点で言えば、せっかくの経験が具体的な経験に終わってしまって抽象化が足らないので聴衆にうまくつたわらないように思われ、非常に残念でした。実際の役割はしっかり果たされていることはよくわかったので、それをうまくまとめて抽象化し、聞き手がそこから自分事として具体化できるようにするのが伝え手としては求められるのだろうな、と思いました。

プレイヤーとして優秀なこととコーチや監督として優秀なことは異なるというのは言い古された言葉ですが、久しぶりにそんなことを思い出しました。翻って、マネジメントを志向する場合には、プレイヤーでの優秀さはあってももちろん良いのですが、それよりもそのエッセンスを受け手に合わせてうまく伝わるように言語化すること、それを具体的な形に落とせるところまで伴走することが重要だよね、と改めて思ったことでした。

抽象化の度合いも一律では伝わらず、いろいろなレベルで行う必要がありますし、それを具体的にするとどういうことなのかも例として豊富に持っていることが望ましい。人によって伝わる例は異なり、これでもかと例を並べていく必要があったりします。一度事例や比喩で納得感が得られれば、抽象化された言葉で走ることができますが、そうでないと雰囲気だけで終わってしまい、何も進まないことになりがちなんですよね。

「それって要するにどういうこと?こういうこと?それともああいうこと?」
「それは具体的にはどうやるの?」

を繰り返して繰り返してようやく認識がそろって前に進むんです。そして、要するにが得意な人というかすぐ丸めた言葉で表現しがちな人がいる一方、まったく具体的な話から上がれない人もいます。

前者がいいかというとそうでもなくて、きれいにまとまったそれっぽい表現を具体的に落としてみると、その範囲が半分くらいしかカバーできていないということもよくあります。

後者の方は、そのまま具体的なところを真に受けると変な方向に行ってしまうことが多くて危ない。そう言ってるけど実は本来やってほしいのはどれ?を見極めないといけません。もうすこしどちらも融通無碍になってほしいものです。。

話が逸れましたが、経験を積めばできる、成功すればできる、というわけでもないのな、という衝撃を持って聞き終わったセミナーでした。