天職の舞台裏

天職と思って日々仕事をしてますが、その舞台裏で色々考えていること、あるいは水面下でジタバタしてることを書いています。

紛争の経験

このブログを始めたとき(前のブログから移行したとき)に、私の「天職」は知財渉外で、そちらをメインのブログとして切り出して書き、このブログにはその舞台裏を書いていこう、という思いで名付けをしています。

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その後の会社人生の変遷があり、10年近く経った現在は知財職から離れています。また、それより前に、「メイン」だと思っていたブログのネタに詰まってしまったり、しっかり考えて書く熱意と時間が取れなくなってしまったりして、そちらのブログは2016年から休止状態になっています。

とはいえ、ここに書いてきたことは、今でも変わっていないセオリーのようなものだと私自身は考えています。だからネタに詰まってしまったのかもしれませんが。(これ以上自分の持ち札にセオリーがない)

さて、現在は法務は管掌しているものの知財は手放している状態で、普段の特許係争(まだあるわけですが)は、報告は受けていますが自身では手を出していません。法務の方も、元々契約実務をやってきたわけではないので、自分が手を動かせる範囲は限定的で、特にベテラン課長職を得てからはすっかりお任せにしていますし、経営から持ち込まれるものについても当たりをつけるのにまずは相談に乗ってもらってその上で考えることが常態化しています。

会社の事業分野の関係で、知財(特許)は規模の割に係争が絶えないのですが、一般法務(契約法務)ではそんなことはなく、トラブルになるのは稀です。トラブルになれば外部に相談する割合が高くなりますし、元々弁護士さんは訴訟代理を主にしている方も多いと思われ、弁護士事務所では、紛争専門家が多いのでしょうが、企業法務部門で紛争専門が必要なほどにはならないでしょう。

というバックグラウンドの違いの中、私が呼吸するように普通に考えるトラブル対応、相手との交渉やそれに臨むための準備、考え方などは普通の法務職にはさして馴染みのあるものではないらしい、という発見がありました。通常の契約法務としては、法律的にメインストリームになりうるのはどの辺りか、ということを考えて進めておくのが常道なため、思考の癖としてどうしてもそこに引っ張られる傾向があり、双方の主張を考えるというよりは、裁判官はこんな感じに判断するだろう、になってしまい、「あんたどっちの味方なのよ!?」って事業部門に言われたりする、と。

そして、案外特許紛争で使ってきたセオリーって、特許じゃなくても使えるものなのね、という感触です。ずいぶんニッチなところで仕事してきたな、と思っていましたが、役に立つものだというか、人生経験に無駄なことは一つもないというか(大きくでたな)。

例えば、事件の見立てをどうやってやるかという話。以下は、知財事件に引き付けて書いていますが、法務トラブルについては、最初の中村直人先生の発言が刺さりますね。「正当性の根源」はどこにあるか、という見極め。

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また、「中の人」であるための自社有利な発想だけに偏らないように気をつけて見立てをする必要もあり、相手のポジションを想像することも重要、という以下の話。法務トラブルでは、技術常識の代わりにその分野での慣行を考慮に入れる必要があるかもしれません。

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思考の癖というのは、どんな仕事にもあるので、それを認識して、必要な時にはその枠を取り払えるように意識するのが必要なのではないか、と思ったのでした。