掲題の記事、先日のセミナーで講師の池田弁護士が予告されており、楽しみに待っていました。そういえば、セミナーの際は衆議院の解散がクローズアップされたところで、課徴金導入の景表法の改正案は今国会は成立はないだろうとの見通しでしたが、あっさり成立しましたね。
実体面の議論に乏しい
セミナーでも、誌面でも言われていますが、景表法は、課徴金制度などの制度面の議論はなされるものの、どのような表示がどのような場合に違法になるか、といった肝心の実体面の議論に乏しいという問題意識があるようです。
つまり、景表法の表示規制は、「一般消費者が実際のものより著しく良いと誤認するような表示をしてはいけない」とされているだけで、それを具体的な広告に当てはめた場合にどこまでがOKでどこからがNGなのかの判断基準がないと現場では困ってしまうわけですが、基準を生み出すほどの種々の「積み重ね」が不十分、とのことですね。
このような積み重ねの一つになるように、との試みで書かれているとされたこの記事は、数回の連載になるようで、ありがたい限りです。
広告・キャンペーン等
今回は連載の初回として、(1)比較広告、(2)キャンペーンの延長、(3)表示主体について、それぞれケースを挙げて取り上げられています。
それぞれのケースについてあてはめが行われ、そこから発展して、前提が異なる別の場合についても取り上げられています。考え方が示されているため、自社の類似のケースについても考えていくことができそうです。
詳細なガイドラインは不適切
本稿の「おわりに」で、「行政が景表法の判断のための詳細なガイドラインを示すべき」と言われそうだが適切ではない、との考えが示され、その理由として2点が挙げられています。
- ガイドライン等の事前規制は、未知の事案に対処できるようにするために実際の執行よりも広めに規制を行わざるを得ないが、景表法の規制対象は営業上の表現の自由かつ自由競争を行うべきものであるから、あらかじめ制約することは望ましくない
- 景表法が問題とするのは、実際の商品役務と表示から生じる一般人の認識の齟齬だが、「一般人の認識」が時代や環境によって変化するため、ガイドライン等によって事前に画一的に定めることが困難
同じような趣旨で、あとから警告などを受けるおそれを回避するため、事前に消費者庁に相談するのはどうか、ということもよく言われるけれど、事前相談ではどうしても安全サイドに振れた回答になりがちなのでお勧めしない、という話もセミナーでは出ていました。
違反しなければよい類のものではなく
景表法に違反しないようにするのは実は簡単で、広告をしないとか、誤解の余地が全くないおとなしい表現を用いるとかすれば良いわけです。
寄せられる事業部門からの相談に乗っていると、リスクを回避したいあまり、何のために広告するわけ?と言いたくなる方向に担当者の思考が進んでしまったりします。
本稿の「法務担当者の視点」にも、
広告では、限られた枠の中で当該商品の特徴的な効果、性能の魅力を強調するために、短く印象の強い言葉やインパクトのある画を使用することが多い。
とありました。その「強調」が「誇張」になり「誇大」で「誤認」になるのはグラデーションで、きっぱりラインが引けるものではなく、また、時代によっても、何かのきっかけでも変わりうる。ということをわきまえて、アンテナが鈍らないように、そして、勝手解釈にならないように注意してすすめるべきなのでしょう。